焼き加減最高! 噛むとしみだす熟成牛の旨み!
2010年7月初旬。チビ兎と初訪問。
食通の間で評判になっているお店なので、日本に居る間に是非一度訪れたいと思ってました。
この日にネットで、北海道で草だけを食べて育った短角牛でラグー(いわゆるミートソース)を作ってPiciのソースとして提供するという情報を入手!!即決で席を予約したわけです。
Pici(ピチ)というのは、うどんのような手作りパスタで、シエナ周辺のご当地パスタなのです。デカ猫は、シエナにたったひと月ですが、暮らしていたことがあるのでこのPiciという響きには非常に弱いのです。当時は2日に1回はpiciを食べてました。向こうでは冬だったのでほとんどいのししのラグーでしたが。
しかし、この店にたどり着くのは、大変です。東京の飲食店の立地としては、最低に近い部類でしょう。都営地下鉄大江戸線の牛込柳町から、坂をがんがん上ること7~8分。まわりにほとんど店はありません。
でも実は、イタリアとかスペインでいい店と言うのは、こういうところにあるのですぞ。
だって安い値段で料理だせるし、腕のいい料理人といいサービスがないとお客さん来ないから、悪い店はすぐ消えてなくなります。でも評判にさえなれば、みんなこの店をめがけて人はやってくるわけです。
でもここを選んでスケルトンで店を作ったというのだから、自信があったのでしょうね。たいしたもんです。
Antica Osteriaとは、イタリア語で「古くからの様式を残した居酒屋」の意味なのに、店内は明るく、いかにも新しい雰囲気。古めかしいイタリアの居酒屋とは思えないのですが、この名称はインテリアの事ではなく、うまいワインをがんがん飲みながら、肉料理を食べるという食のスタイルの事をいっているのでしょう。
カルネヤ(カルネは肉です)という店名からもわかるとおり、ここは「肉屋」さん。つまり、「西洋風焼肉屋」です。なんと明確なコンセプト! こういう店に来てデカ猫は、間違っても魚料理や健康志向の野菜料理は食べません。そういうときには、別の店に行きます。
しかも、オーナーシェフのイサミンは、浅草にある老舗焼肉屋さんの息子さんで、子供の頃から美味しい肉の処理の仕方を熟知しているいて、美味い肉をかぎ分けるDNAを持っているわけです。
つまり、この店は、「今日は健康志向を忘れ、旨い肉を食うぞ!」という人々のためのパラダイスなのです。
ただし、噛みごたえのある肉でかつ、50日とか60日とか長期熟成させた肉の旨みを味わう店であって、霜降りの黒毛和牛の「美味しさ」を至高のものと考えておられる方には無縁の店であるということも断っておかなければなりません。「うわーやわらかぁぁ~い!」などと喜ぶ向きにも関係ありません。見ようによっては、かびて腐っている肉のもつ旨さをわかる人たちだけに来てもらいたいお店なのです。
でもフォアグラや霜降りよりよっぽど、健全な肉ですから案外健康的かもしれません。いまそんなにお腹もたれてませんから。
さて前振りが長くなりすぎました。
この日、注文したのは、軽く炙った和牛レバーのカルパッチョ仕立て(1290円)、ピチの短角牛のミートソース(2200円)に、メインのスーペルカルネオールスターズ(7800円)です。
ホントは、前菜2皿、プリモ2皿にこのメインをオーダーしたかったのだが、ホールの責任者の方が、「それは多すぎますよ。様子を見てからのオーダーのほうが」とおっしゃるので、初訪問のデカ猫は素直に従うことに。
結論から言えば大食漢のデカ猫は、もっといけましたw
合わせるワインは、ピチにあうトスカーナのビオワインを何種類かたずねたところ、メニューにのってないスーパータスカンの2004年のロアケール(Loacker)のレバンテ(Levante)を8000円で出してくれるというので、それに決めました。すぐあけてもらっておいて、こなれるのを待つ間、グラスのスプマンテ(暑いときにはうれしいしゅわしゅわです。)をとりあえず飲むことに。
このワインは、普通に買っても5000円はするから、非常に良心的な価格で出しているといえます。ここらあたりに、ワインをがんがん飲んで美味い肉を食わせようというオーナーの心意気が読み取れます。このワインなんとガラスの栓で拍子抜けするくらい簡単に抜栓できました。
前菜は、炙ったレバーのうえにイタリアンパセリとかエシャロット等のみじん切りがのせてあるものだ。酸味のあるソースがかかっている。まず、あれ、酸味結構きいてるなと思っていたら、後から炙った和牛レバーの甘味が出てきてグットバランス。とても美味い。
あわせる先ほどのワインは、まだがちがちでした。
プリモは、お待ちかねの北海道の草だけで育った短角牛のラグーのPiciです。すでに2人分にシェアされてますから量はたいしたことありません。ソースは、思いのほかトマトの酸味が利いていてガッツがあるというよりは繊細でした。牛のレバーも入っていてこれが美味。Piciは個人的にはもっと野太いのが好きですが、ソースもそれほど重くないのでこれはこれで、ちょうどいいのかもしれません。
そして、先ほど注文したワインとあわせます。
このレバントというワイン。今流行のビオなのですが、ともかくカベルネの品種的な特徴がはっきりでたワインでした。サービスの方はメルローとのブレンドとおっしゃってたけど、ほとんどその品種的を感じないほどカベルネ的でした。
最初はメチャメチャ渋。タンニンの固まり。非常にクラシカルなボルドーのような胡椒とか私には金属的なと感じられるカベルネ香。しかし、ピチとあわせる頃には、時間もたちこなれてきて非常にマイルドで繊細になってきていい感じです。
ただ良くも悪くもカベルネで、香りと余韻はいいのだが、悪く言うと飲んでるときの味わいが薄いというような感じでしょうか。でもピチも繊細(でもあくまでPiciですから、細いパスタのフレッシュトマトとか、レモンソースとかそういうものではないですよ。念のため。)なので、これもマッチングよしと解釈しましょう。
でも今日のメインイベントは、なんといっても肉。
本日のオールスターズは、50日熟成の短角牛、熟成のアンガスビーフのさがり(ハラミ)、ハンガリーの国宝豚と言われるマンガリッツァ豚、シャランの鴨、NZの子羊でした。計600gというので多いといえば多いですが、イタリアのグリリアータミスタなどの田舎料理の量からすればたいしたことはありません。ただ品質は、ありえませんね。
これだけのものを持ってきて一皿に集めるなんて、東京の牛込にしか。世界のグランメゾンでは、こんな炭火で焼いただけの料理も、盛り方はしないでしょうから。いやこれはいい意味でです。
炭火での焼き加減も最高!!!
噛んででてくる肉汁の旨み!!!
全く、こじゃれておりません。いい素材を、最高の状態まで寝かせて、さらに最高の焼き方で、素材をストレートに味わう。これがデカ猫の考える最高の食道楽なのです。グランメゾンの☆付きシェフの信者さんの中には、こういうものを料理でないという人もいるかもしれませんが、所詮猫のたわごとですから許してもらいましょう。付け合せのサフランで香りと色をつけたじゃが芋のピュレも美味しかったです。
豚や子羊、鴨等の個々の肉を、最高の状態に寝かせ、最高の状態で焼いて出す店は、正直他にありますが、こんなお皿は見たことありませんね。でもそれぞれの肉のレベルは、最高を誇る他店と遜色なし。完全に匹敵するといってもいいほどです。しかもその中でぴか一だったのは50日熟成の短角牛でした。
ここにこの店の真骨頂がありますね。大いに気に入りました。
デザートは、パイナップルとバジリコのシャーベット(奥)と、ヘーゼルナッツのアイスクリーム(手前)。前者の清涼感オススメです。パイナップルは、タンパク質分解酵素があるから肉食後の消化のために使ってますといっていたが、消化しきれる肉の量ではないですね(笑)。
ヘーゼルナッツのほうは、思いのほかあっさりしていて、驚き。これも肉食後のことを考えてのことかなと思います。ミネラルウォーターや食後酒にはアマレットをもらって2万4500円。決して安い価格ではないですが、ポーションとクオリティーを考えれば、そしてドリンクを安めに価格設定している点などを考えると抜群のコストパフォーマンスです。
さて次回は、イチボとカルボナーラを食べるぞと腹に決めて、このパラダイスを後にしました。
チビ兎は肉1/3ぐらいしか食べておりません。っつーか、胃袋に入りきりません!ポルコにあげてもいい。以前イタリアで食べきれずに、レストランの犬に半分あげましたw
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